都市の遺物を発掘した測量士たちが、そこに秘められた暗号(クリプトグラム)を聞き取り、都市にひそむ歴史や記憶、死者の息づかいに耳を傾ける・・・。その遺物が発する暗号のような文字を暗号器官(クリプトグラフ)である俳優(測量士)が読み取り音声化してゆくのである。と同時に、俳優は、血液都市、戦争都市、天使都市・・と名付けられた、かつて世界のどこかにあったであろう都市の相貌を持った架空の都市についての「報告」をし、あるいは都市の住民たちとなり、都市についての証言を述べていく。

舞台上には、NYのツインタワーを想起させるような二つの柱が立っており、そこにはいくつものイメージが映し出される。また、いくつもの電球が天井から垂れたワイヤーの先に吊されており、そこに遺物が吊り下げられる度に電球は点り、最後にはそれらの光が「星座」のように広がる。

——見えたもの、聞こえたものだけが「歴史」ではない。遺物や死者たちのひそやかな息づかいが暗号器官(クリプトグラフ)に届いたとき、見えないものが見え、聞こえないものが聞こえる……。

作・演出:松田正隆
出演:武田暁/F・ジャパン/枡谷雄一郎/山口春美/山本麻貴/牛尾千聖/宮本統史
2007年9月/カイロ・エジプト公演 会場:Miami Theater 2007年10月/京都公演 会場:アトリエ劇研
2007年12月/北京・中国公演 会場:Nine Theater 上海・中国公演 会場:Down-Stream Garage


1][2][3][4][5][6][7][8][9]                photo:橋本裕介



■図書新聞2855号「2007年演劇回顧」 執筆:高橋宏幸/2008年1月26日(土)

『クリプトグラフ』では、カルヴィーノの『見えない都市』に着想を得て、様々な虚構の都市に、現実にある都市の生活の言葉が断片として入り込み、架空の都市の話であるはずが、非常に生々しいものとなっている。そこには都市の記憶として戦争や内乱など凄惨な風景と同時に、スパムメールの言葉などが散りばめられて、記号と日常会話が混在している。廃れた都市の廃墟を前に、詩を書くことの野蛮さともいうべき、建てることの野蛮さを演劇の空間が引き受けていると言っていい。いわば都市空間に孕み、対峙する空間がそこにはある。


■劇評サイトwonderland 2007.11.3掲載
まとめようとすると落ちこぼれる 「報告する演劇」の生成現場 松井周(サンプル主宰)
掲載サイト


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