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マレビトの会を振り返る vol.10

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 犬飼:
「〈マレビトの会のポッドキャスト〉進行させていただきます、犬飼勝哉(いぬかい・かつや)です。そして、マレビトの会の代表、松田正隆(まつだ・まさたか)さんです。」

松田:
「よろしくお願いします。」

犬飼:
「今回は新作に出演される3名の方がいらっしゃってます。生実慧(いくざね・さとし)さん、西山真来(にしやま・まき)さん、廣瀬もえ(ひろせ・もえ)さんです。よろしくお願いします。」

生実・西山・廣瀬:
「よろしくお願いします。」

犬飼:
「〈マレビトの会を振り返る〉と題しまして、これまでのマレビトの会の活動や公演の話をお聞きしておりました。今回は第10回目ということで、振り返るというより未来の話ですね。新作公演『皿の上の見えない人間 Invisible woman on the plate』のお話をお聞きします。」

『皿の上の見えない人間 Invisible woman on the plate』(2026年)

『皿の上の見えない人間  Invisible woman on the plate』稽古場の様子
新作公演の稽古風景

犬飼:
「いよいよここまでやってきました。今は2月の末頃ですが、稽古をされていると思いますけど、その様子も含めて、どういう公演なのかをお聞きしたいなと思っております。」

松田:
「はい。」

犬飼:
「まず、公演のウェブサイトに掲載されている文章の一部を読んでみて、そこからお話をさせていただこうかなと思うんですけど、よろしいですか。
〈今回の『皿の上の見えない人間 Invisible on the plate』では地方に生きる人々のごく普通の人生が描かれる。その人生は平凡ではあるものの、日々の日常には特異性があり、ある種の「光」を発しているのではないだろうか。今作は、その「光」に焦点を当てながら、劇を立ち上げようとする試みである〉
と書かれているんですけども。〈光〉というワードが。 」

松田:
「そうですね。いままで、えっと、8年ぶり?」

犬飼:
「そうですね。8年ぶり。」

松田:
「前回までは、集団でつくってきたところがあったし、そして2013年から2018年まで6年間、長崎と福島をテーマに、被曝都市をやる(上演する)というのが、マレビトの会のモチーフとしてあったわけですけど、いきなり「広島を上演する」という方向には(いかない)。集団的な作品創作には時間かかるし。このままだとずっとできないっていうのもあったんで。とにかく上演をおこないたいとは、ここ数年は思ってたんですよね。 でも上演する機会をずっと逸してきて、」

犬飼:
「中止もありましたよね。コロナ禍の。」

松田:
「ええ、中止もあったんで。とにかく私が戯曲を書いて演出をして、という作品をつくりたいとも思ったんで。マレビトの会で。
自分の身近なモチーフは、やっぱり地方っていうのもあったんで、そこで生活を営む人の日常を。あまり〈物語〉という筋の通ったものではなくて、エッセイ風というか、あるいはジャーナル、日記みたいなもので、断片的に繋げていく作品という、最初は軽く浮かんだものがあって、そこからだんだん定着させていく感じで。」

『皿の上の見えない人間 Invisible woman on the plate』稽古の様子

松田:
「念頭にあったのは、僕、長崎の田舎の平戸っていうところにいるんです。そこが故郷なんですけど。ちょっとずれたところがいいかなと思って。この8年間のあいだにも「海辺の街」シリーズって、平戸をモチーフにした海辺の田舎をモチーフとした作品を、ロームシアターで2本つくったのもあったので、ちょっと違うところがいいかなと思って、有田とか伊万里とか、」

犬飼:
「焼き物の?」

松田:
「焼き物。波佐見焼とか三川内焼っていう、長崎県の県北の、佐世保のちょっと近く。 県境の佐賀県側に有田というところがありますけど。有田焼で有名な。実家に帰った時に訪れたりしたので、そこをモチーフに書けないかなと。」

犬飼:
「タイトルの『皿の上の見えない人間』の〈皿の上の〉っていうのは、そのお皿ってこと?」

松田:
「陶器の皿っていう意味だけどね。」

犬飼:
「なるほど。」

松田:
「でも〈場面〉っていうか、演劇の上演の場っていう意味合いも、どこかにはあったりもしましたけど。 」

犬飼:
「皿の上に乗っているというのが、上演として提示されているというか。」

松田:
「そうですね。」

犬飼:
「そこにスポットを当てる、じゃないですけど。」

『皿の上の見えない人間 Invisible woman on the plate』稽古場風景(2026年)

松田:
「それと、あんまり恋愛とかそういうものではなくて、人間と人間の同盟関係みたいなものを、3人の人物、俳優と一緒に構築したいっていうのもあって。同盟の関係っていうのもあれだけど、一般的な、すぐ思いつくような人間関係ではない人間関係が構築できないものだろうかと。同盟というか。ちょっと考えたいなという。」

犬飼:
「なるほど。」

松田:
「〈光の同盟〉っていうかね。」

犬飼:
「戯曲を読ませていただいて。」

松田:
「ああ、はい。」

犬飼:
「どういう話かというのは、(公演で)見ていただいいたらと思うんですけど、」

松田:
「でも、どういう話か言ってもいいんじゃないですか。話はないと思うけど。」

犬飼:
「2人の登場人物の関係性。仕事先が一緒の、」

松田:
「そうそう。」

犬飼:
「2人の関係性が基本として描かれる。そのうちの1人が、相手の〈スミコさん〉という人に、知ってるようで知らないような関係なんですけど、その人物を想像していったりとか、そういったところでお話が進んでいく話ですよね。」

松田:
「うん。どこかで出会った、ちょっとした関係の人、ちょっと気になるけど、外見しかわかんない、この人ってどういう人物なんだろうっていう。でもとくに関係が深まるわけじゃない、現実の世界では関係が深まるわけじゃないけど、だけど気になる人もいるわけで。その人との間でフィクションを立ち上げて、上演でしか生まれない人間関係をつくりたい、という。
今まで僕は〈出来事の演劇〉って言ってたわけだけど、出来事って、一個の〈発光〉というか、発火点っていうか。上演で初めて場面が立ち上がってくる時の場面の中で光るものという。そういう意味で〈光〉っていうか。」

『皿の上の見えない人間 Invisible woman on the plate』稽古の様子

犬飼:
「なるほど。」

松田:
「物質的に〈光〉を捉えたいっていうのもあって。人間性とか人間に回収されるというのじゃなくて、演劇の上演で初めて発光するようなものとして、描いてみたいなっていうのがあります。」

犬飼:
「〈光〉というのはそういう、」

松田:
「そうですね。〈出来事〉って言ってもいいんだけど。
1人の人物がもう1人の人物について語っていくうちに、大きな筋やストーリーがあるわけじゃなくて、1個1個のアクション、行動っていうか、日記の中で8つぐらいのブロックがあるんだけど、そこでいろいろ描かれていくことを、順次語っていくような、日記の内容を語っていく。日記的に〈スミコさん〉という一人の人物を描いていく手法?手法っていうんですかね、そういう構成をつくったという感じですかね。」

『皿の上の見えない人間 Invisible woman on the plate』稽古の様子

犬飼:
「いま稽古されている方のお話もちょっと聞いてみたいなと思うんですけど。」

松田:
「僕はもう、」

犬飼:
「いや、そんなこと言わず、」

松田:
「いや、喋りますけど、ちょっと喋りすぎたかもなって。」

犬飼:
「いま話に出てきた〈スミコさん〉という役を演じられるというか、演じられるというのも、マレビトの会だと変ですけど、」

松田:
「いや、」

犬飼:
「変ではないか。生実さんと西山さんが今回は引き続き、今までマレビトの会に関わられていて、今回も出演というかたちなんですけども、今回どういう印象なのか、稽古してみてどうなのかをお聞きできたらなと思うんですが、西山さん、どうでしょうか。」

『皿の上の見えない人間 Invisible woman on the plate』稽古の様子

西山:
「えーと、最初の方は、言葉があって、空間があって、そこに人たちがいて、そのバランスというか、いろんな線が錯綜している中で合うところはどこだ、みたいな。そこで立ち上がるとしたらなんだ、みたいなことを考えてて。
一言一言とか、ひと動きひと動きとかで、お互いに干渉し合ったりして、そういうところで何が生まれるんだろう、みたいなことを考えてたんですけど。今は稽古して1週間ぐらいで、」

犬飼:
「そうですね、はい。」

西山:
「(稽古期間の)真ん中ちょっと手前ぐらいかなと思うんですけど、時期的には。そういう関係の中で立ち上がるみたいな印象は、今までマレビトの会でやってきた感覚ってどうなんだったっけ、めっちゃ久しぶり、みたいな感じでやってたんですけど、それとは違う文脈も生まれてきて、もうちょっと物語のことを今は考えてます。」

犬飼:
「物語というのは、脚本上の物語への意識がこれまで以上に高いということですか。」

西山:
「今ちょっとそういう時期、」

犬飼:
「ああ、西山さんの中でそういうモードになったというか。稽古していて。」

松田:
「あれだけ「物語ではない」って言ってたのにね。」

西山:
「そうですね。真逆なことを言ってる。」

犬飼:
「さっきね。」

松田:
「どういうことなんですか。」

犬飼:
「でも物語って、それこそ日記のようなものでも、物語ともいえますもんね。」

松田:
「なるほどね。いや、最後に(発言が)飛躍したから。ちょっと教えてほしい。」

西山:
「今までやってた時は、広いところで、トコトコ歩いて出てきて、こういうアクションしました、それが空間に波及していくイメージだったので。極端なこと言ったら、ある一単語を言った時に、その一単語はそれまでの文脈と関係なく、それだけが輝くみたいなこともあった。
っていうか、そういうのを多く(これまで)感じてた。それぐらい自由度高く一語一語とか、一アクション、一アクションをやってて、その時の〈スパーク〉みたいな印象があったんですけど、その時より〈物語〉っていうか、文脈みたいなことなのかもしれないですけど。」

松田:
「なるほど。」

『皿の上の見えない人間 Invisible woman on the plate』稽古の様子

西山:
「そういうことをわかった上で、一語(セリフ)を言った方が良さそうと思った時間があって。」

犬飼:
「やっぱり今までとちょっと感覚が違う、というのがあるんですか?」

西山:
「っていうのを、ちょっと試していこうという時期です。」

犬飼:
「稽古を拝見していて、セリフを喋る量が多いのが、廣瀬さんですよね。」

西山:
「めっちゃ多い。」

犬飼:
「どうですか廣瀬さん。すごい廣瀬さんが喋っているなって思って。」

廣瀬:
「はい、」

犬飼:
「マレビトの会に今回初めて出演されるということで、印象というか、ざっくりとした感想もお聞きしたいなと思ったんですけど。どうですか?やってみて。」

廣瀬:
「とにかくずっと喋り続けてっていうか、語り続けていて、それで〈スミコさん〉とか、その場が進んでいく感じなので、常にせき立てられてる感じはあります。はい。」

『皿の上の見えない人間 Invisible woman on the plate』稽古の様子

犬飼:
「大変ですか?」

廣瀬:
「大変、めちゃ大変です。」

犬飼:
「自分が回さなきゃみたいな感じですか?」

廣瀬:
「回すというか、言ったことが同時に起きていってしまうので、実際にそれをやるよりも、そこで起きたことを処理する時間がないまま、また次の出来事を言って、またそれで動いて、また次のことを言って、が永遠と続いていくから、現状を認識する前に、自分がそれよりも先に進んでいるというのが、せき立てられる感じです。」

犬飼:
「演技をしている時に、ほかの演技の場とは違った感覚があるんですか。この形式だと。」

廣瀬:
「だいぶあって、ずっとナレーションみたいな感じでやってたんですけど、そうじゃなくて、自分も一緒に〈スミコさん〉の生活の中にいる感覚になった方がやりやすいって、昨日くらいに思って。
普通に自分自身が、例えばスーパーに行く演技するとか、ご飯を食べる演技するとかよりも、それによって次のことが引き起こされる感覚が強いなっていうのは思います。」

犬飼:
「松田さん、そういう印象なんですって。」

松田:
「だから、いま育って、育ってというか、だんだん変容していってる。」

犬飼:
「作品がですか?」

松田:
「うん。変容っていうか。書いてる時にわからなくて、上演の現場で。廣瀬さんはずっと日記を読んでるんだけど、日記は過去のことを書くわけだけど、上演で読めば読んだことが(舞台上で)起こるから、演技をする最中になりつつ、語りでもあるっていうことが、今起こってるのかなと思いますけど。」

『皿の上の見えない人間 Invisible woman on the plate』稽古の様子

犬飼:
「語りのテキストは、マレビトの会のここまで数年間、『長崎を上演する』以降のものではあんまり見られなかったものですよね。」

松田:
「ないですよね。一切そういうことはしなかったですね。むしろそういうことから離れたいっていうのがあったんですけど。」

犬飼:
「はい。」

松田:
「でもやったことはあるんですよ、他の現場で。戯曲だけ書くということでね。二人芝居でつくったことが(ある)。『冬の旅』ってやつ。語りのお話だったんだけど。
他の人が演出したんで、現場に居合わせたわけじゃないし、上演は見ましたけど。やっぱりスタイルとして、今の、狭い場所を想定して、ほとんど動かずに、ミニマムな最小限の動きで、何も舞台装置を置かないで、っていうものでは初めてやっている感じがしますけどね。」

犬飼:
「今までマレビトの会がやってきた上演形式を継承している部分もあるし、新しいテキストの形式が融合していて、そのかなりの大半を担っているのが廣瀬さんだったんですね。すごく喋ってますもんね。」

松田:
「大変やけどね。でも喋る人と喋られる人がいるので、」

犬飼:
「確かにそうですよね。」

松田:
「喋る人は直に観客に向かってるっていうよりも、とはいえ日記形式なんで、どこかに報告はしてるんですけど、でも直接的に観客に向かってるわけじゃなくって、その報告の宛先は不明でもいいかなとは思ってるんだけど、ただ、報告の中で語られている人は〈スミコさん〉。バイト先で、バ先の、」

犬飼:
「バ先の、」

西山:
「バ先、」

松田:
「はい。なんですか?」

犬飼:
「あ、バ先の。」

松田:
「バイト先の。ちょっと思わずバ先と言いましたね。」

犬飼:
「そうですね。学生さんに普段から接せられてるから。バ先っていうフレーズが。」

松田:
「ちょっと、わざわざ言いましたもんね。」

犬飼:
「ああ、そうですね。言い直しましたからね。」

松田:
「うん、バ先ってね。 そのバイト先の、たまたま隣にいた、でもちょっと気になる人と、僕はさっき〈光の同盟〉とか言ったけど、この2人の関係で面白いものができないかっていうのはありましたね。」

『皿の上の見えない人間 Invisible woman on the plate』稽古の様子

犬飼:
「つまりその登場人物、廣瀬さんが演じている〈モエノ〉という人物から見た〈スミコさん〉を語るという形式ですね。」

松田:
「廣瀬さんがいま言ったのは面白かったですね。どんどん先に進んでいって、隣に立っている西山さんが適応していくお話でもあるから。どんどん廣瀬さんが、あるフィクションを、それは自分の日記の内容ではないけれども、こういう人がいて、ということを世界をずっと語っていくことに、西山さんが乗らざるを得ないみたいな。」

犬飼:
「はいはい。」

松田:
「そういう意味では〈たくろう〉の漫才みたいなっていうのは、あとで意識しました。そういうふうにも見れるかなって。」

犬飼:
「〈たくろう〉の漫才を見て、あ、これだ、これを書いてたんだって思ったと。」

松田:
「いや、まあ、ものすごく親和性があるとは思わないけど。それとしても応用できるっていうか。相関性がないとは言えないとは思いましたね。」

犬飼:
「生実さんは、マレビトの会の2018年の『福島を上演する』以降も、松田さんが作・演出をした作品に出られていて、」

松田:
「ロームシアターの。2本出てる、」

犬飼:
「その後の上演形式の感覚もご存知だと思うんですけど、今回はどうですか。引き続き出演されて、」

生実:
「やっぱりこれまでとはちょっと違う、ちょっとまた違ったスタイルだなって。」

『皿の上の見えない人間 Invisible woman on the plate』稽古の様子

犬飼:
「ロームシアターでやられてた、先ほど「海辺の作品」と言われた海辺の町を描いた作品というのとは、やっぱりまた、」

生実:
「日記調とかエッセイっていう、そのテイストなのかもしれないですけど。それまでの(作品)はやっぱり物語が、強いというか。」

犬飼:
「僕もロームシアターの作品を拝見したんですけど、『長崎を上演する』『福島を上演する』の時、〈スケッチ〉という言葉をよく言われていた。実際に町に訪れて、そこの様子を描いた、スケッチ感があったと思ったんですけど。〈スケッチ〉というよりかは、本当にダイアリーの、書かれたものという印象を受けたんですけど、そういう感じですかね。」

生実:
「そうですかね。」

犬飼:
「やってみて、今どんな感じですか。」

生実:
「なんか不思議な状態だなって。舞台上に出ていない時で、廣瀬さんと西山さんを見てても、なんか不思議な状態だなって思いますね。」

『皿の上の見えない人間 Invisible woman on the plate』稽古場風景(2026年)

犬飼:
「今日稽古を拝見させていただいたんですけど、生実さんはいつもの平常運転という感じに、僕には見えました。」

生実:
「そうですか。そっか。」

犬飼:
「やっぱり生実さんだなと思った。」

生実:
「そうかもしれないですね。そう言われてみると、そうか、」

犬飼:
「ぶれないっていうか、ぶれないっていう言葉も変ですけど、生実さんがいるな、と思ったんですけど。」

生実:
「そうですか。」

松田:
「いつもの生実さんじゃない方がいいですか。」

犬飼:
「いや、いつもの生実さんがいいです。僕は。
(今回の作品で)いろんな役を演じられますよね。生実さんの場合は。」

生実:
「はい。」

犬飼:
「2人の関係の中で出てくる、いろいろな出会う人たちを、生実さんが演じる話ですね。いろんな役をやってるなーって感じはあるんですか。」

生実:
「ありますね。はい。」

犬飼:
「あ、また違う人になった、みたいな。」

生実:
「うーん。そうですね。そうです。」

松田:
「演じ分けてるの?」

生実:
「いや分けては、」

犬飼:
「それ、ちょっと興味あります、僕も。」

生実:
「うーん、なんか違うノリではある気はしますけどね。」

松田:
「鈴木亮平みたいに、演じ分けてるの?」

犬飼:
「2人が、違う役で、」

松田:
「すいません、変なこと。」

犬飼:
「『リブート』というドラマの話ですね、それは。」

松田:
「言ってどうするんだっていうことを言ってしまいました。」

犬飼:
「演じ分けって難しい問題だと思いますけど。」

松田:
「同じ人物のまま、違う人物をやるわけだからね。」

犬飼:
「演劇で見てる場合、やっぱり体の存在感が大きいので、」

『皿の上の見えない人間 Invisible woman on the plate』稽古の様子

松田:
「同音異義語みたいなもんじゃない?」

犬飼:
「同音異義語?」

松田:
「すみません。」

西山:
「うみ、うみ、うみ、」

松田:
「〈うみ〉で、Seaと、膿んでるのと、あるいは出産もある。」

犬飼:
「なんでいま海の話、」

松田:
「同音異義語、」

犬飼:
「ああ、同音異義語。」

松田:
「日本語は同音異義語だらけだよね。」

犬飼:
「〈マレビトの会を振り返る〉と言って、今回は最終回なんですけど、ここまでずっと振り返ってきた上で、今回、廣瀬さんが初めて稽古場に参加されている状態なんですけど。
稽古場での感覚とか、稽古場外でもいいんですけど、そういうのを見て、ざっくりこういうふうに思ったみたいなのって、マレビトの会ってこうなんじゃないかみたいな、」

廣瀬:
「ええ?」

犬飼:
「稽古長いなとか、」

廣瀬:
「ああ、全然、」

犬飼:
「稽古は短い方だと僕は思うんですけど、ざっくりとした印象とか、松田さんの演出の印象とか、本当に感想みたいな感じでお聞きしたいなと思ったんですけど。」

廣瀬:
「松田さん、授業を受けている時も思ってましたけど、」

犬飼:
「廣瀬さんは大学で、松田さんの授業を受けられたってことですね。」

廣瀬:
「喋るのがすごいゆっくりで、何を考えてるのか、あるいは何も考えてないのか、間が怖いなって思う時はあります。」

西山:
「ああ、」

廣瀬:
「でも、そんな怖い言葉が出てくることはほぼないですけど、」

犬飼:
「何を考えてるんだろうなと。」

廣瀬:
「はい。」

犬飼:
「それは演出の時とかも。」

廣瀬:
「まあ、そうですね。」

犬飼:
「そうなんですって。」

松田:
「うーん。」

西山:
「なに、その方式?そうなんですってって。」

松田:
「聞いてますよ。この場にいるんだから。」

犬飼:
「僕よりむしろ近い(座り)位置にいますよね。でもまあ確かに、考えながら喋っているなという印象は僕もしますけど。言葉を選ぶというか。」

『皿の上の見えない人間 Invisible woman on the plate』稽古の様子

松田:
「え、そういう場なんですか?ここは。」

犬飼:
「まあ、どうなのかなと思って、いろいろ。脚本はどう思います?」

廣瀬:
「え、脚本?」

犬飼:
「ホントに感覚レベルで、思った感想みたいな。」

廣瀬:
「ああ、でも長いなっては率直に思いました。あとセリフ量めっちゃ多いなってのは思ってますけど。」

犬飼:
「今回は特殊ですよね。」

廣瀬:
「はい。」

犬飼:
「楽しくできてます?」

廣瀬:
「あ、それは、はい、ありがとうございます。」

犬飼:
「どうですか、西山さんと生実さんは、今のこの稽古は。」

西山:
「脚本への質問を、私も廣瀬さんにしてみたい。」

犬飼:
「ああ、それはぜひ。」

西山:
「私、さっき物語のことを考え出したって言ってたんですけど、劇中で(役柄が)何十歳ぐらい差の感じがするんですけど。そんなこと書かれてないんですけど、ちょっと世代違いそうみたいな、」

廣瀬:
「はい。」

西山:
「もう一人出てくる人も、世代っていうか、見ている生活の感じが違いそうって感じるんですけど。」

松田:
「もう一人って?」

西山:
「〈シゲコさん〉。」

松田:
「ああ、〈シゲコさん〉。」

西山:
「世代の違うお友達みたいな関係で、一緒に仕事する仲間ではいるんですけど、個人的なこととか、生活的なこととか、感覚の細かいことを共有する人っていうのはあまりいなくて。
〈Invisible woman〉っていうことで言うと、とくに話聞きに行こうとか、この人のこと気になるなって思う人って大抵ビジブルな人が多い。違う世代だったら、決定権のある人とかが、自分にとってビジブルっていうか、強く見えてくる人で。
(劇中の人物が)違う世代だから余計に、話を聞こうと思う対象にならなそうな2人、と思って。そういう時、伝えられることとか、伝わることとか、(何が)あるんだろう?って思ったんですけど。どう思いますか?
なんて言ったらいいんですかね。こういう関係ってリアル(現実)だと、どう、」

松田:
「ああ、実際そういうことがあるのかってこと?」

西山:
「とか、」

松田:
「興味を持つもんだろうかって。」

西山:
「みたいな。(興味を)持つとしたらどういうポイントなんだろうかとか。
自分だったら、女性の先輩で、話聞いたりとか、子供をこういうタイミングで産んで、キャリアをこういう風にしましたとか、話を聞いたりしたことあったなと思って。
教えてもらうとかじゃなく、2つの存在として、場を共有する時の興味の持ち方って何だろう、みたいな。」

廣瀬:
「ああ、」

西山:
「そんなことってありますか。」

廣瀬:
「ない、です。え?」

西山:
「そうですよね、と思って。でも確かに。」

『皿の上の見えない人間  Invisible woman on the plate』稽古場の様子

犬飼:
「どういうところから興味を持っているのか(という意味?)。どういう接点を、」

西山:
「でも、そんなに理由とかない感じで居てて、そこがいいと思うんですけど。
実際の、私の生活感覚だとこんな風に今思ってますけど、どうですか、みたいな感じで、」

廣瀬:
「ないですね。だから昨日(の稽古)とか〈イライラ〉してきちゃって、なんでこんな年上で、ただ一緒の職場なだけの人が「走りました」とか、ご飯食べてスーパーでなにか買ってみたいなのを、なんでずっと自分が説明しなきゃいけないんだみたいな。昨日(の稽古で)やりながら、」

西山:
「うんうんうん。」

廣瀬:
「でも今日(の稽古)は落ち着いて、というか、いつか自分もそういう風な生活を送るかもしれないから、当事者意識みたいなのが今日は出てきて、」

松田:
「へえ。」

廣瀬:
「お葬式のシーンとかも、感情移入してきちゃいそうになって。辛いだろうなって。
この人の、こういうトピックが興味あるとかじゃなくって、自分にいつか訪れるかもしれないかもと思ってました。今日は。」

西山:
「面白い。」

犬飼:
「確かにちょっと面白いですね。なんで知らない人のこと説明しなきゃって、」

松田:
「その辺の動機とか、そういうのは全く考えなかったですね。観察するように、見知らぬ人っていうか、でも接点はあるんだけど、何回かお茶を飲みに行ったりしている人の生活を描写(する)。
でも、ほとんどでっちあげてるんじゃないかな、とか。〈モエノさん〉のほうで。フィクションでつくってるんじゃないかとか。」

『皿の上の見えない人間 Invisible woman on the plate』稽古の様子

松田:
「西山さん(が演じる人物)に対して言及していることが、実際には本当に起こったことではないので、西山さんの方が、廣瀬さん(が演じる人物)が語る内容に対して「それちょっと違うんじゃないの」っていうことも含めながら。そうなってくると現在進行形になっていくわけだけど。そうやって修正しながら、フィクションを2人で立ち上げていく構成にはなってるのかもしれないですけどね。
快楽とか、人間がそもそも持っている欲みたいな、あるいは必要性とか〈得になる〉とかっていうことではない、そういうものにドライブされるんじゃない話はつくってみたいなとは思ってたんですけどね。」

犬飼:
「うん。」

松田:
「年齢差はあんまり考えてなかったんやけどね。同盟関係って〈シスターフッド〉とか、女性同士の繋がり、そういうのとはまた違うものとして描きたかったしね。他人のまま、上演が、フィクションが。
でも、そういうのがいま重要な感じがしてて。そういう共同体が上演の中で生まれるって。それを公的な空間で、一個の可能性として、人間関係の可能性、人間関係だけじゃなくてもいいんだけど、そういう意味での〈光の上演〉だから。
そういう可能性の上演として、既存の人間関係と違う何かが生まれてくればいいかなと思ってるんですけど。」

犬飼:
「なるほど。多分ここから話が深まっていく感じがするんですけど、そろそろお時間ということで。」

松田:
「あ。」

犬飼:
「まだちょっと喋り足りない感じですか?」

松田:
「いやいや、いちおうそういうふうに残念、」

犬飼:
「残念がってみたって感じですか。実際に作品を見ていただきたいですよね。」

松田:
「そうですね。あんまりこう、作品分析をしていってもね、自分たちが、」

犬飼:
「見た方にいろいろとお聞きしたいところですね。
というわけで〈マレビトの会を振り返る〉ということで、今日は振り返ってないんですけど。」

松田:
「本当だ。」

犬飼:
「これからつくられる作品。『皿の上の見えない人間 Invisible woman on the plate』のお話でした。ということで、公演は2026年3月19日から22日。会場は三鷹にあるSCOOLという会場になります。
チケット発売中なんですが、今(収録日)は発売されてます。売り切れる可能性があるから。」

松田:
「そんなことないでしょう。」

犬飼:
「いや、あると思います。ということで、どうもありがとうございました。」

松田:
「はい、もうこれ終わりなんですか。このシリーズは。」

犬飼:
「このシリーズは終わりです。」

松田:
「いい機会でした。皆様、ありがとうございました。」

 

文中の画像は、篠崎誠 氏の記録映像からキャプチャしたものを掲載しています(1枚目・3枚目・12枚目・14枚目を除く)。

 


マレビトの会 新作公演

皿の上の見えない人間 OGP画像

『皿の上の見えない人間 Invisible woman on the plate』

日程|2026年3月19日(木)〜 22日(日)
会場|SCOOL(東京・三鷹)

》公演情報はこちら

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