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マレビトの会を振り返る vol.4

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犬飼:
「〈マレビトの会ポッドキャスト〉、進行させていただく犬飼勝哉(いぬかい・かつや)です。そして、マレビトの会代表の松田正隆(まつだ・まさたか)さんです。よろしくお願いします。」

松田:
「よろしくお願いします。」

犬飼:
「マレビトの会の俳優で出演されています、生実慧(いくざね・さとし)さんです。よろしくお願いします。」

生実:
「よろしくお願いします。」

犬飼:
「同じく、俳優としてマレビトの会に出演されています、西山真来(にしやま・まき)さんです。よろしくお願いします。」

西山:
「よろしくお願いします。」

三宅:
「そして、マレビトの回の劇作、制作などを担当されています、三宅一平(みやけ・いっぺい)さんです。よろしくお願いします。」

三宅:
「よろしくお願いします。」

犬飼:
「前回に引き続き、5人でお話をしている〈マレビトの回を振り返る〉。今回は第4回ということで、前回は『クリプトグラフ』という作品まで振り返ってきたんですけども、」

『声紋都市—父への手紙』(2009年上演)について

犬飼:
「今回は『声紋都市—父への手紙 Voiceprints City — Letter to FATHER』という作品です。
2009年3月に東京芸術劇場で上演されています。F/T(フェスティバル・トーキョー)の参加作品というか、フェスティバルの中で上演された作品になります。
今回はこの作品を振り返っていきたいんですけども、ここにいる方の中では西山さんが出演されてまして、」

西山:
「はい。」

犬飼:
「この作品は一体どういった作品だったんですかね。松田さん。」

松田:
「これは決定的に転機になった作品でしたね。これまでは僕のテキストから、僕の演出で、という感じだったんだけど、かなり複数のディレクションが入ってくるというか。
もちろん(自分が)代表なんで、僕が最終的には、っていうところはあったけど。まとめるみたいなね。だけど、まとめられなかったし、まとめようがない感じにどんどんなっていったんで。
参加者の分、複数性が。とくに音響と映像が入ったし。スタッフワークがものすごく全面に出てきた。
前回までに言ったように、奥村(泰彦)さんの美術もかなり大きかったけど、それよりもスタッフワークが併存するような、複数化したっていうのがあって。僕だけのイニシアチブじゃ、回っていかないようなところがありましたね。」

松田:
「『声紋都市』としては、僕の父親に取材をするっていう体(てい)で、セルフドキュメンタリーの映像を、舞台構造的に斜面があったんだけど、その斜面の上の方から俳優が滑り落ちてくる構造物をつくって、その上に大きなスクリーンをつくって、そのスクリーン(の映像)で、僕のセルフドキュメンタリーのように、父親に取材していく。
父親が海軍の兵士だったし、あるいは父親が僕を、幼い頃に原爆資料館に連れて行って、その時に僕が目撃してしまう展示物があって、それが無脳児っていう写真。被爆者の女性から生まれてきた胎児の写真があって、もちろん死産だったわけだけど。それがデカデカとね、壁にかかっているのがトラウマで。
ちょっと意味がわからなかったんですよね。脳がなくて生まれてくるっていうのがね。小頭症の胎児っていうことなんですけれども。その後、展示物から外されるんですけど。被爆との因果関係が証明されないっていう意味もあって。」

犬飼:
「F/Tの資料にも、そう明記されていましたね。」

松田:
「そうですか。自分のオブセッションになった出来事の記憶を映像で映していくのと同時に、私自身が部屋で戯曲を執筆しているっていう映像も映しながら、(俳優が)下で、斜面を降りてくる。
斜面は長崎のイメージで。その下で俳優たちが上(スクリーン)に書かれたセリフを発話していく。そこでパフォーマンスしていく。
そこで繰り広げられているテキストは、カフカの「父への手紙」とか、ハムレットの亡霊とハムレットの関係とかね。そういうのを引用しながら。
前回までの名残もあるし、新たなチャレンジもしていく部分の、ちょうど境界線上にあって、一歩踏み出したような手応えはありましたね。」

犬飼:
「なるほど。フェーズが変わった作品の1つ目というような。」

松田:
「そうですね。作り方がなんかやっぱり(変わった)。映像も、取材しに長崎に行ったりしたんで。偽物の映画監督みたいになって、原爆資料館に行ったり、稲佐山に登ったりしたり、自分の実家に行って、父親がまだ存命だったんで、父親にインタビューしたり。」

犬飼:
「お父さんも映像には? 」

松田:
「映ってますね。」

犬飼:
「松田さんが父親を主題とした作品、プラス、集団創作のかたち。今(のマレビトの会)は本当に集団創作という意味合いが本当に強くなっているんですけども、その始まりというか。」

松田:
「そうですね、うん。」

犬飼:
「そういうことなんですね。」

松田:
「それでやっぱり遠藤幹大さん(映像)と荒木優光さん。
音響の荒木くんのディレクションも大きかったですね。その2人と一緒につくっていった部分もあるし、舞台の演出、舞台監督助手だったり、演出助手っていたかな、」

犬飼:
「米谷さん?」

松田:
「米谷(有理子)さんと、舞台監督の、」

犬飼:
「夏目(雅也)さん、」

松田:
「夏目さんとか、共同してつくっていった感じかな。」

犬飼:
「スタッフワークがだいぶ強くあった、」

松田:
「あと制作もかなり入り込んできて、森(真理子)さんが。 」

犬飼:
「団体としての、」

松田:
「団体として大きく。まあ『クリプトグラフ』から繋がっている人たちでもあるんだけど、」

犬飼:
「松田さんが中心となって引っ張るというよりかは、」

松田:
「集団創作になっていくんですね。」

犬飼:
「松田さんの守備範囲が減っているというか、そのようなつくり方になってるわけですね。
何かの資料で見たんですけど、松田さんが少女の格好をして映像に映ってる?」

松田:
「〈少女ムシェット〉になったんですけど、」

犬飼:
「ああ、なるほど。」

松田:
「人にやらせるばかりじゃなくてね。自分もなろうと。」

犬飼:
「それはすごく面白いなって。そんなことをやってたんだと思って。 面白かったですか?大変でした?」

松田:
「うん、寒かったですね。」

犬飼:
「京都の池のところで?」

松田:
「宝ヶ池に落ちたんですけど。『少女ムシェット』って、転がって池に落ちて死ぬんですけど。そうやって1回死んで、もう1回やり直そうみたいな。」

犬飼:
「ああ、なるほど。」

犬飼:
「再生の。松田さんにとっての、」

松田:
「再生の物語。」

犬飼:
「その前までの松田さんはそこでいったん、」

松田:
「いったん切れて、」

犬飼:
「生まれ直したというか、生まれ変わったのが、今の松田さん?」

松田:
「なんか五山の送り火の、」

犬飼:
「はいはい。京都の?」

松田:
「宝ヶ池に一番近い、五山の送り火の、何の字だったかな。鳥居じゃないな、」

犬飼:
「たくさん。大文字(送り火)で、いろんな文字が、」

松田:
「〈大〉ではなかったんだけど、舟形かな。ちょっと覚えてないですけど、そこを転がりました。遠藤君にここ転がってくださいって言われて。」

犬飼:
「舟形とかの、大文字(送り火)の文字のある山を?」

松田:
「草が生えてない道があるんですけど。いや〈大〉だったかな、まあなんでもいいんだけど、五山の送り火の山だったのを覚えてて。
転がったのを1回撮って、その延長線上に、宝ヶ池があるってことに(映像的には)なってるんだけど、」

犬飼:
「なるほど。」

松田:
「繋げたら、そのままパッと落ちてることになったんですけど。それで浮かび上がってくるんだけど、浮かび上がってるところは切って、波紋しか残ってないみたいな、」

犬飼:
「落ちたままみたいな、」

松田:
「あんなことが、映像ってできるんだなっていうのは思いました。」

犬飼:
「遠藤さんが言わないと、松田さんも転がらないですもんね。 転がってくださいって言われないと。」

松田:
「朝方に思いついて、全部やっちゃったんで。でも米谷さんかなんかがウィッグ?を、あれ?じゃあどこで、」

西山:
「そんな思いついて、すぐやって、」

松田:
「で、どうしたのかな。まあ、とにかく買って、三つ編みにして。スカートみたいなの履いて。でも朝方なんで撮影クルーがみんな僕の家の2階にいて。妻がもう本当に腰抜かすほどびっくりして。」

西山:
「言ってなかったんですか。」

松田:
「「やめて!」とかって言われて、」

犬飼:
「そんなことしないで、と。」

松田:
「と言いながら、三つ編みを直してましたけどね。」

犬飼:
「そういう協力もあって、」

松田:
「「こっちのほうがいい」みたいな。」

犬飼:
「なるほど。今までの作品の話とは違った意味でのチャレンジングですよね。映像を撮ったとか。その映像が中心となった演劇だったんですね。」

松田:
「人にはもう見せたくないですけどね。あそこのシーン。 」

犬飼:
「もうお蔵入りですか。」

松田:
「はい。」

犬飼:
「今はどこでも見れない映像があるんですね。西山さんはこの作品はどうなったんですか?」

西山:
「これもすごい好きで。「ムシェットになって」みたいな感じで、パフォーマンスの部分も「何々になって」みたいな感じだったんです。映画のワンシーンとか。私はなんだっけ、ナイフで刺される、サーカスとかでナイフで狙われるやつあるじゃないですか。ナイフ投げ。」

犬飼:
「ナイフ投げて、人のすれすれでパチンって刺さるやつですね。」

西山:
「そういうシーンとか、なんかいろんな。
『クリプトグラフ』の時もその感じを覚えてるんですけど、ゴダールの映画とか、タルコフスキーの映画とか、他の物語を借りてきて、もう一回やってみ直すみたいな、切り貼りをしたのを覚えてて。
断片の物語と違う断片が舞台上で出会う時、すれ違う時の感じが面白くて。『(少女)ムシェット』という映像の中の物語とか、お父さんとの本当のこととかのすれ違いも、すれ違うときに何か起きる感覚が。
「だとしたら絶対このタイミングだな」とかがわかる感じ?このタイミングで歩いた方がいいなとか、わかる感じが面白かったのを覚えてます。」

犬飼:
「なるほど。」

西山:
「あと集団創作のことで言うと、ナイフ投げの女の「あー!」って叫ぶ声の音程を、音響の荒木さんと相談したりして、ディレクションもやってくれるみたいな。」

犬飼:
「どのぐらいの高さがいいとか?音響的に。」

西山:
「そういうのも面白かったのを覚えてます。」

犬飼:
「松田さんのディレクションというよりかは、複数人のディレクションによって、ということですかね。」

松田:
「そうでしたね。一発出しで映像はずっと続くんで、それにどうやって音を、あるいはパフォーマンスも合わせていくか。
映像だけ先走ってもいかんし。無数に生じてくるキュー(きっかけ)の合わせが、僕にはわかんない状況になってくるから。スタッフ同士で、どんどん「もうこうこうした方がいい」って回していって。
だから、俳優の一挙手一投足も俳優にも任せるような感じにならざるを得なくなってくるし。簡単に中心でタクト振るような感じにはならなかったですね。」

犬飼:
「自分の意識の範囲外のものが舞台に上がらざるを得なかった、そうならざるを得ないような形で上演されたと。」

松田:
「そうですね。」

犬飼:
「僕、個人的に聞きたかったんですけど、前作『クリプトグラフ』の中にも〈「声紋都市」からの報告〉があったと思うんですけど。どういった意味合いがあるんですか。」

松田:
「いや、特に。声紋みたいだって思ったっていうのがありました。長崎の斜面が。」

犬飼:
「坂の形とかが?」

松田:
「声をビジュアルにした時の紋様みたいなものとして考えようという感じだったんですかね。」

犬飼:
「じゃあ、声紋都市というのは長崎?」

松田:
「そうです。そのつもりで書きましたけどね。
それと、父の権威とか権力構造とかを、どう批判的に舞台にするかっていう問題。」

犬飼:
「この作品はF/T(のウェブサイト)にも、かなり詳しく書かれてたりして。
お父さんが、戦争の時に兵士をやっていたことに驚いたと。」

松田:
「改めてね。今まで知ってたけど。よく考えてみたらとんでもないことだなとは思いました。」

犬飼:
「それと、無頭児のイメージ。それもお父さんに無理やり連れて行かれた、みたいな?」

松田:
「いや、そうでもなかった。父親じゃなくて、「あれは姉が連れて行ったんじゃないか」って言ってましたね。」

犬飼:
「それがつながって、」

松田:
「うん、父親だと思ってたんでね。無理やりっていうか、 無理やり感もなかったんだけど。父親を恨んでるつもりもないけど、原爆資料館に近づけない。その当時、資料館というか建物だったね、今の資料館とは違う、建造物があって。今でも覚えてるけど、そこを見るのも嫌な感じで。電車の中から見えたりしたんですけど、怖かったですね。しばらく。」

犬飼:
「子供の時に怖いものってありますよね。単純にもうビジュアルで怖いものみたいな。
そういったものをテーマに、だけど集団創作ということなんですね。
三宅さんから何かあります?この作品について。」

三宅:
「そうですね。タイトルの「父への手紙」はカフカから取られているっていうのと、」

犬飼:
「カフカの短編であるんですかね。」

松田:
「短編じゃなくて手紙です。本当の手紙。」

犬飼:
「父への手紙が載ってるんだ。」

松田:
「実際(手紙を)出さなかったんですよ。出せなかった父への手紙が残ってたらしくて。母親が読んで、こんなの出さないようにって。恨みつらみをずっと書いてるんですよ。父がどんなに私にひどいことをしてきたかみたいな。」

犬飼:
「それもモチーフになっている。」

三宅:
「あと、一応引用文献ではハムレットとか。旧約聖書 創世記。」

松田:
「そうね。なんだっけ、アブラハムとイサクの言葉?」

三宅:
「あとは、マイケル・ボーダッシュ「ナショナリズムの病、衛生学という帝国」。『現代思想』の97年7月に載った論文ですかね。これも引用している。」

松田:
「…知らない。」

三宅:
「先ほど松田さんおっしゃられたように、お父さんが兵士をやっていた事と、ナショナリズムの問題が、どこかで関連しているのかなと思ったんですけれど。
そういう私的な記憶と、お父さんのある種の戦争責任みたいなものを問う作品をつくられたと思うんですけど。」

松田:
「そうですね。それもあった。戦争責任というか、その時、父親が天皇に拝謁して、天皇から勲章をもらう(出来事があった)。
父親はずっと教育行政をやってたもんやから、地方からも行くわけですよ、長崎から。東京に出てきて。でも天皇に会う前の晩に、お酒も飲まなくなって。なんか緊張してて。なんだ?と思ったことがあって。なんだ?っていうか、なぜ緊張するんだろう、とかね。
その辺のことも父親にぶつけたかったけど、直接的には聞けなかったけどね。聞かなかったし。でも、そういう複雑な、いろんな思いをそのままテキストにしていった感じのものが、(舞台の)上で映像で(流れている)。
俳優は、父親役をやっている俳優に対して、「なんで震えていたんだ」とかって演技ではやってもらう構造はつくった気がしますけどね。
さっき複数性って言ったけど、この演劇自体で権力構造が顕在化するように、わかりやすく見える化する劇にはした感じはしましたね。
(舞台の)上に映像があって、テキストも出てきて、それに指示されてやっている俳優たちみたいな。でも最終的にはだんだん混乱していくような感じにはなるんですけどね。もう一回やり直そうって言い始めて。池に落ちてから。」

西山:
「先に支配する側のほうが途切れますもんね。それで残された私たちは、もう自分でやるしかない、みたいな感じで。」

犬飼:
「父親がいなくなるというみたいなことですか。」

西山:
「そうか、そうなんだ。」

犬飼:
「あとは自分たちでやれよと、」

西山:
「最後の方で、一番コントロールできない俳優としてのコピー機が出てきて、もう本当に言うこと聞かなかったですよね。コピー機。」

犬飼:
「何を言ってるんですか?」

西山:
「コピー機が出てきたんですよ。俳優として。俳優としてっていうか。」

犬飼:
「エプソンみたいなやつ?」

西山:
「エプソンみたいなやつが。ガラガラガラガラって出てきて、無脳児を大量にコピーしていくって感じになるんですけど。それで、みんな「わー」って感じ。本当に言うこと聞かなくて。人間以上に。」

犬飼:
「コピー機が。うまく動かない?」

西山:
「動かないし、本当にみんながそのために頑張る。」

松田:
「F/Tのスタッフの方が、どこかから持ってきたんだよね。」

犬飼:
「コピー機を。代わりの?」

松田:
「 そうそう、代わりのやつね。」

犬飼:
「トラブルの話ですか?」

西山:
「なんか象徴的だなっていうか。人間も混乱してるし、機械もやってきて、さらに混乱、」

松田:
「それ、クリエーションの時の話だよね。」

西山:
「あ、そうでしたっけ。そっか。」

松田:
「上演中には壊れないでしょ。」

西山:
「そうですよね。」

犬飼:
「という、『声紋都市—父への手紙』のお話だったんですけど。この後『PARK CITY』という作品もあるんですけど、一旦切ります?」

松田:
「うん。」

犬飼:
「一旦切りますか。では次は『PARK CITY』の話をさせていただきます。ありがとうございました。」


マレビトの会 新作公演

皿の上の見えない人間 OGP画像

『皿の上の見えない人間 Invisible woman on the plate』

日程|2026年3月19日(木)〜 22日(日)
会場|SCOOL(東京・三鷹)

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