マレビトの会を振り返る vol.3
- ポッドキャスト
以下、テキスト起こしです。
犬飼:
「マレビトの会ポッドキャスト、進行させていただきます犬飼勝哉(いぬかい・かつや)です。よろしくお願いします。そして、マレビトの会の代表、松田正隆(まつだ・まさたか)さんです。よろしくお願いします。」
松田:
「はい、よろしくお願いします。」
犬飼:
「そして、マレビトの会に俳優として出演されています、生実慧(いくざね・さとし)さんです。よろしくお願いします。」
生実:
「よろしくお願いします。」
犬飼:
「そして、同じくマレビトの会に俳優として出演されています、西山真来(にしやま・まき)さんです。」
西山:
「よろしくお願いします。」
犬飼:
「マレビトの会で劇作や制作などを担当されています、三宅一平(みやけ・いっぺい)さんです。」
三宅:
「よろしくお願いします。」
犬飼:
「今回はちょっと人数が増えて、僕を含めて5名でお話させていただきます。〈マレビトの回を振り返る〉の第3回目ということで、前回『パライゾノート』という作品まで振り返ってきまして、今回はその続きということでお話させていただきます。
マレビトの会は新作公演『皿の上の見えない人間 Invisible woman on the plate』を 2026年3月に上演予定されてまして、それに関して、これまでを振り返ってみようかなとお話をしているという、今の状況です。よろしくお願いします。」
『アウトダフェ』(2006年初演)について
犬飼:
「ということで、本題に入っていきたいんですけども、マレビトの会を設立から振り返ってきて、第何回公演か忘れてしまったんですけど、(数えて)第5回公演『アウトダフェ』という作品。
これが2006年に上演されてまして、会場が伊丹のアイホールで2006年9月に上演されて、シアタートラムでも2006年12月に上演されているという、僕の手元の資料です。会場のサイズが大きくなったような感じがしますが。」
松田:
「そうです。」
犬飼:
「そうなんですか。」
松田:
「うーん、これも美術をやっぱり奥村(泰彦)さんに頼んで。
モチーフにしたのがチェルノブイリ(チョルノービリ)の原発事故から、何十年目だったかな。前の年かその年だったかな、取材に行ったんですよね、チェルノブイリまで。その印象、その事を戯曲にしたっていう感じがしましたね。
〈石棺(せきかん)〉って呼ばれているような、コンクリートで、四号炉だったかな、チェルノブイリの原発が封鎖されている現場に行ったり。あるいは、プリピャチっていうチェルノブイリの作業員たちの家族、チェルノブイリに関わる原発に関わる人たちの都市があったんですね、町が。今や草ぼうぼうの廃墟になっていて、という場所を訪れた経験みたいなもの。そこでのコンクリートのひび割れみたいな。原発の廃炉作業を持続して行っている時期でしたけれども。
それを目の当たりにしたイメージを、そのまま奥村さんに言って。天井一面に、一面というか、中空に。下がプールみたいになっていて、そのプール自体の体積分、上にコンクリートがこういっている(浮いている)みたいな、そういうイメージと言ったら、そのまんま奥村さんがデザインしてくれて。半分地下になっているような場所と、そこから這い上がってきて、俳優が。
中空にはコンクリートの塊が、舞台上に乗っているみたいな。そういう巨大な構造物をつくって、その周りで、その下で、俳優たちがうごめきながら芝居を、またそれもいろんな引用から出来上がっているようなあの作品でした。」
犬飼:
「なるほど。」
松田:
「なので、今までフランチャイズということで(アトリエ)劇研を想定してつくっていたけれど、アイホールでやるっていうふうにして、三方から観るような感じでしたかね。二方向かな?その辺は曖昧ですけれども。
プールを取り囲むようにして、できあがってたかな。それもアウシュヴィッツのイメージとか。原発のイメージもありつつ、そういう負の(遺産)。
あるいは、長崎の浦上(うらかみ)のイメージとか。テクノロジーによってもたらされた人類の幸福と、でもその分かなり負の遺産もあるわけで、負の遺産の方にスポットを当てて、つくった作品だったような気がしますね。」
犬飼:
「なるほど。この『アウトダフェ』という作品は、テキストが電子書籍で読めるんですけど。Kindleで読めるんですよね。〈二十一世紀戯曲文庫〉という、劇作家協会が出している。
テキストを読むとかなり散文的というか、引用がすごくされていて、散文的な印象を受けたんですけど。このテキストはどのように書かれたんですか?」
松田:
「どういうふうに書いたかな。構成をいったんつくって、イメージから喚起されるような言葉をとにかく、ざっと出していったって感じかな。引用も含めて。引用的に参考にしながら。オラショからの言葉もあるし、」
犬飼:
「コラージュするような?」
松田:
「コラージュ的な、うん、そうですね。そういうふうにつくっていって。
(舞台上に)廃材もいっぱいあって。F.ジャパンさんがずっとなんか運んでるみたいな感じでした。物を運んでる。」
犬飼:
「担いでいるんですか?」
松田:
「一輪車みたいな、手押し車で運んでる感じでしたけど、ずっと。」
犬飼:
「ずっと運んでる。他の人も?」
松田:
「うん、運んだりもするし。」
犬飼:
「モニュメントというか、その実際のモノ(舞台装置)が、松田さんが、その取材されたところのインスピレーションをもとに、テキストも、いろんなところから引っ張ってきて、ギュッと(つくった?)」
松田:
「僕の故郷に、焼罪(やいざ)っていう、当時、幕末の宣教師が火炙りになったという場所があるんですけどね。〈焼き〉の〈罪〉と書いて焼罪(やいざ)って読むんだけど、そのイメージ。
アウトダフェっていうのは〈火の刑〉っていうか、そういう事じゃないかな。そういうイメージが。」
犬飼:
「そういうイメージを重ねていたと、」
松田:
「ずっとなんかおどろおどろしいよね、確かに。このあたりのマレビト(の会)のイメージっていうのは。 」
犬飼:
「ちょっと真顔になるというか。」
松田:
「え、真顔?ああ、シリアスになるってこと?」
犬飼:
「ただ扱っているモチーフは、長崎を舞台にした戯曲を書かれていた時も、当然原爆のことがモチーフになるし、人々が巨大な何かによってかき乱されてしまった〈受難〉というか、そういったものを受けた人の、」
松田:
「そうですね、受難劇みたいな。」
犬飼:
「その振る舞いというか、どうしたらいいのか分からない人々を描くという印象というか、そういうものを描いているというのが、松田さんの戯曲の根本にあるテーマかなと思ってるんですけども。
長崎だけではなく、チェルノブイリだったり、アウシュヴィッツだったりを重ねていって、いろいろなところから、テキストを抽出して、舞台上にモニュメントみたいな。」
松田:
「そうですね。うん。モニュメント的なものはあったね。」
犬飼:
「だから延長線上というか、テーマにしているのは変わらず、引き継がれているんだなと思いますけど。」
松田:
「一番、舞台セットとして凝ったのはそれ(『アウトダフェ』)じゃないかな。やっぱり奈落みたいに、プールみたいにできる劇場じゃないと無理だったので。」
犬飼:
「下からせり上がってくるわけですね。俳優が。」
松田:
「そうですそうです。」
犬飼:
「そのモニュメント、つまり蓋をしたところから湧き出てくるような?」
松田:
「そんな感じでした。上にコンクリートの構造物が宙吊りになってるっていうイメージがあって、下からパッと上にいってる感じが。そういうことありえないんだろうけど、でも、そのあいだ(隙間)でなんかやりたいって感じだったね。
ありえないっていう意味では、チェルノブイリに行った時の、こんなすごい未来都市をつくったのに誰も住んでないとか、どんどん放射能が漏れ出てるのに、構造物で閉鎖しようと、なんとかコンクリートで蓋しようとしているっていうイメージがあって。そういうことを演劇で表象したい、というのはありましたね。」
犬飼:
「描きたいものがかなり中心にあって、」
松田:
「そうですね。だからそういうことにまともにこうぶつかって、イメージをビジュアル化しようとして、俳優たちが蠢いてるみたいなことになってて。
演劇がその時、成功しているかどうかわからないんですけど。でも『アウトダフェ』とその後の『クリプトグラフ』は、ずっとやってきたことの集大成的なところがあったかもしれないですね。」
犬飼:
「なるほど。『クリプトグラフ』がこの次で2007年で、」
松田:
「『アウトダフェ』は2006年?」
犬飼:
「2006年ですね。すごいペースですよね。ここまで。」
西山:
「確かに。」
犬飼:
「ハイペースで、かなり大きな作品をポンポンポンとやられているイメージですけど、」
松田:
「『王女A』も2005年か2004年とか?2004年が『島式(振動器官)』ですから、」
犬飼:
「『王女A』は2005年、『パライゾノート』は2006年。かなりハイペースというか、1年にひとつは作品を、」
松田:
「そうですね。」
犬飼:
「しかもかなりバジェットが大きいというか。」
松田:
「だんだんね。うん。」
『クリプトグラフ』(2007年初演)について
犬飼:
「この後は海外を回られることになるんですね。『クリプトグラフ』ですね。」
松田:
「はい。」
犬飼:
「僕の手元の資料だと、2007年9月にカイロのMIAMI THEATER。」
松田:
「はい。」
犬飼:
「その後、2007年10月にアトリエ劇研でやった後に、北京の劇場。2007年12月に北京。」
松田:
「上海でもやりましたね。」
犬飼:
「上海は同じく2007年12月。その後ちょっと空いて、2009年の1月にインドで2公演。デリーとラクナウでやられた後に、こまばアゴラ劇場。七ツ寺共同スタジオは名古屋ですね。というふうに多分マレビトの会の中で、」
松田:
「一番ツアーしたんじゃない?」
犬飼:
「そうなりますよね。」
松田:
「それは頑張りましたよ。」
犬飼:
「この作品に西山さんが出演されてる?」
西山:
「はい、あの途中から。」
犬飼:
「途中から。2007年から2009年までやってる作品なんで。2009年の時から出演されている?」
西山:
「インドの公演からです。インドの、デリーとラクナウ。はい。」
犬飼:
「それで、どうだったんですか?」
西山:
「でも、創作の時は、いなかった(参加していなかった)ので。」
犬飼:
「ああ、そうか。再演としてやる時に、できた状態のところから参加するかたちだったんですね。」
西山:
「そうです。でもまあ、(俳優の)身体が違うから。その時は、いろんな記憶を、前回(〈マレビトの会を振り返る〉vol.2)の時に人間の身体がラジオの受信機みたいに、いろんなところから来る声をたまたま受信して発してるみたいなアイディアの話が出たんですけど、そういう感じでしたよね。
いろんな遺されたものとか、そういう記録が声に乗っちゃったみたいなことをやってたんですけど。
みんな震えたりとか、大変な身体状況だったんですけど、その積み重ねはあんまり共有してないから、(自分が)やってもちょっと違う感じになって、「じゃあ西山さん、それやらなくていいよ」みたいな流れが結構あったのを覚えてます。」
犬飼:
「ちょっと。悲しかったというか、」
西山:
「いや、でも、」
犬飼:
「なんか大変なところに関わってしまったみたいなことですか。」
西山:
「あ、でも観てたんですよ。作品を観てて、めっちゃ面白くて。わけはわかんなかったんですけど、なんかすごい作品観た時って鼻通る感覚あるじゃないですか。」
犬飼:
「ちょっと僕はないかもしれない。鼻がスーって?」
西山:
「なんか血流が良くなって、」
犬飼:
「鼻づまりが取れるみたいな感じ?」
西山:
「みたいな感じがあったんで。」
松田:
「初めて聞いたね。」
犬飼:
「そんなことはないですよね。」
西山:
「血流が良くなる。興奮して。」
松田:
「共有されたのは初めてだね。」
犬飼:
「まあ、そういう状況になるというのは、わかりますね。」
西山:
「そう、それを観てて、だから(出演できて)嬉しかったです。単純にね。」
犬飼:
「あ、出演できて?」
西山:
「はい」
犬飼:
「『クリプトグラフ』という作品も、先ほど言った電子書籍でテキストが読める。『アウトダフェ』と『クリプトグラフ』がセットになった戯曲集が出てるんですけど。
都市を報告する、なんでしたっけ、イタリアの、」
松田:
「カルヴィーノね。」
犬飼:
「そう、『見えない都市』という小説がモチーフ?になっていて、」
松田:
「素晴らしい小説です。」
犬飼:
「マルコポーロが都市を紹介するように、」
松田:
「チンギス・ハンに報告していくんです。」
犬飼:
「こんな都市がありました、こんな都市がありました、という風な形で、いろんな都市を紹介していく構成になっていると思うんですけど、」
松田:
「その構成をいただきまして、つくりました。」
犬飼:
「都市を報告されてましたよね。テキスト上でも。すごく変な都市のことを報告していて、あ、そうなんだと。測量士たちが。
これはどういったその経緯からこういった作品を?」
松田:
「読んだんですか?観てはいないの?」
犬飼:
「観てはいないですけど、テキストだけ、僕は拝見しました。」
松田:
「テキスト、面白いよね。」
犬飼:
「面白いです。面白い…。」
松田:
「だからあんな風に上演しなくてもよかったんじゃないかって。今思えば。」
犬飼:
「あんな風にというのは?」
松田:
「今だったらもうちょっと、ゆっくり報告していくだろうな。」
犬飼:
「痙攣せずということですか? 」
松田:
「なんで痙攣なの。痙攣はしてたね。床這ったりね。」
犬飼:
「身体的な、」
松田:
「最後とにかくモノ、これも美術があれ(凝っていた)だったんだけど、こう、あの、」
犬飼:
「モノがすごい吊られてたんですね。」
松田:
「そうそうそう。モノがバーッと置いてあって、物を吊っていくんだけど、吊ると裸電球が光るみたいなシステムにして、全部吊り終わると、(演劇が)終わる、みたいな。
最後は殺された男が、主人公的な男だったんやけど、一人、こう吊って、」
犬飼:
「人が吊られるわけですね。」
松田:
「モノになるみたいな。」
犬飼:
「それで終わる。それで電球がついて、」
松田:
「(電球が)全部ついて、拍手みたいな。」
犬飼:
「大変ですね、それは。それで、報告する人たちは痙攣したり這ったりをしている?」
松田:
「あんなに動かなくてもよかったって今なら思うんだけど、でもその当時はこれしかないなと思ってた。」
犬飼:
「かなり身体的には大変ですよね。」
松田:
「大変でした。」
犬飼:
「そういった負荷をかけるような?」
松田:
「負荷。負荷ですね。今(現在の作品)はまた違う負荷がかかっているのかもしれないけどね。演出って負荷ですよね。」
犬飼:
「そういう考え方もあると思いますけど。負荷をすごいかけて、」
松田:
「身体的に圧迫するような負荷はかけてましたね。」
犬飼:
「それはどうしてなんですか?」
松田:
「そういうふうに言わないと、強度がないっていうか。劇場のなかで。」
犬飼:
「確かにセリフ自体が強いから、強いというか、込められているものが強い分、」
松田:
「なんか(セリフが)バラバラだし。引用ばっかりだし。引用って言っても、引用風につくってるだけで、僕の創作の部分も多いんだけど。」
犬飼:
「そのセリフを発するためにふさわしい身体として、やはり負荷がかかってないと、ということだったんですね。」
松田:
「そういうふうな感じで動きながらとか、うん。」
犬飼:
「なるほど。」
松田:
「エジプトの演劇祭だったんで、ほかのもの(作品)も観て。
でもその時に、やっぱり我々の身体じゃ海外の人たちの身体と違うなみたいな。迫力が。というのは思いましたけどね。だから、その辺は工夫しなきゃいけないんだろうなってことは思いました。」
犬飼:
「この方向で行っても、」
松田:
「行っても、フィジカルなことで、もうちょっと我々なりの身体のあり方ってあるんだろうな、とは思ったし。
でもいずれにせよ、『アウトダフェ』から『クリプトグラフ』って、まあ一個の達成感はありました。やっぱり。」
犬飼:
「ここまでの集大成のような作品だったわけですね。」
松田:
「というのと、やっぱりモチーフが遠い感じもして、大事なことなんですけど、モチーフをもう少し考え直さなきゃいけないって思ってつくったのが、次の『声紋都市』だったと思うんですけどね。」
犬飼:
「かなり、社会的なというか、歴史的にハードなものを題材としてつくられたのが、この『アウトダフェ』と『クリプトグラフ』ですよね。ハードだなという印象を受け取ったんですけど。」
松田:
「まあ、でもそうですね。2004年からやってきた、5、6年でつくってきた詩的な言語。会話劇じゃなくて、ある意味、散文的に、あるいは報告書として提出するようなテキストとしてのまとまりとして、やってきたことが、これ以上、テキストとしても伸びないなって感じは、」
犬飼:
「ある意味でその到達点に?」
松田:
「到達点っていうか、今思えばもうちょっと方法はあるのかもしれないですけどね。コラージュ的なものっていうのがね。もちろんそれからも続きますけど。テキスト的な問題としては。」
犬飼:
「海外のツアーはどうだったんですか?」
松田:
「楽しかったですけどね、うん。タフでもありましたけれども。」
犬飼:
「どういったところに泊まったんですか?」
松田:
「あんまり覚えてないですけど、普通にホテルに、」
犬飼:
「良いホテルに?」
松田:
「良いホテルでしたよ。カイロなんかすごい良いホテルでした。」
犬飼:
「豪華っていう意味で? 」
松田:
「豪華でしたよ。なんか豪華なホテルに泊まりましたよ。ただ水が悪くて、みんな大変な状況になりましたけど。」
犬飼:
「お腹下したりとか?」
松田:
「大概の人が。」
犬飼:
「水が合わないとか言いますもんね。」
松田:
「みんな気をつけてたんですけど、みんなダメでしたね。」
犬飼:
「ああ、松田さんも含めて。」
松田:
「僕はなんかね、ワイン飲んで、」
犬飼:
「下したんですか?」
松田:
「次の日にものすごい熱が出ました。一日やばかったです。フラフラでしたね。」
犬飼:
「やっぱり海外だとそういう、」
松田:
「カイロだからでしょう。」
犬飼:
「え、カイロだから?」
松田:
「エジプトだからじゃないかな。」
犬飼:
「エジプトはそうなんですか。」
松田:
「うん、だから水が合わなかった。でも、ものすごく、文化的には、イスラムの国にはシンパシーを覚えましたけど。」
犬飼:
「あ、そうなんですね。いいなぁって?」
松田:
「ちょうどラマダンの時期だったんでね。なんかものすごい。行った時にカイロの街を車で初めて行った時もね。
だいたいね、いや今はわかんないですよ、でも飛行場の境目が分かんなかったです。「ええ?」っていう。入国審査みたいなのなかったです、って思ってんですよ。今思えば。」
犬飼:
「なかったんですか?勝手に入ったんですか?」
松田:
「勝手に入った気がしてしょうがないんだけどね。うん。その辺のことは森(真理子)さん(制作)がよく知ってると思うんですよね。 森さんが全部、ツアーはあれしたんで。」
犬飼:
「どういった経緯で決まったんですか? 」
松田:
「なんか演劇祭に出ないか、みたいになったんじゃないかな。」
犬飼:
「その演劇祭に出るための作品づくりで『クリプトグラフ』っていう作品は始まったんですね。」
松田:
「その前に、地点(劇団)が行ってたりしてて。その流れもあったのかもしれないですね。」
犬飼:
「なるほどなるほど。 その後、中国に行って、インドにも行って。」
松田:
「はいはい、そうですね。」
犬飼:
「インドには西山さんも行って。」
西山:
「はい。」
犬飼:
「なかなか、規模が大きくなってきたんですね、マレビトの会も。」
松田:
「どうでしょうね。なんか大きかったかな。まあ、ちょっと頑張りましたね。そのツアーのことに関しては。」
犬飼:
「体力もいりますしね、ツアーとなるとやっぱり。すごい大変ですよね。舞台美術とかも、」
松田:
「そうそう、コンパクトにしなきゃいけない。」
犬飼:
「そうですよね。これまで舞台美術をしっかり、」
松田:
「舞監(舞台監督)の人がね、一生懸命やってくれましたね。」
西山:
「ものすごい包んで、みんなで入れたのをめっちゃ覚えてます。最後に吊るすモノを。」
犬飼:
「それもこっちから持っていかなきゃいけないですよね。それと一緒に旅をしたってことですね。」
西山:
「そういうことになりますよね。」
犬飼:
「なるほど。」
西山:
「あれ、なんでもいいわけじゃなくて、遺物としての見た目になってるんですよ。ちょっと錆びたような。」
犬飼:
「発掘されたものみたいな?」
西山:
「発掘されたものみたいな。それを弔うための布と紐があるんですけど、布と紐と絶対にセットじゃないと、長さとかの関係もあって。布の大きさとか。」
松田:
「それを包んだり上に上げたりするのも、パフォーマンスになってて、」
犬飼:
「重要なところなわけですね。紐の長さも。」
松田:
「そのアイディアは今でもやれるから、再演してもいいんじゃないかなと思うんだけどね。」
犬飼:
「再演可能な作品なんですね。」
松田:
「最後誰が吊られるか。刺されて死ななきゃいけないんだけど。」
西山:
「あれすごい好き。あの作品、すごい好きです。」
犬飼:
「この時は、生実さんは?」
生実:
「僕はまだ見てない、」
松田:
「何してたんですか、その頃は。」
西山:
「京都にはいた?」
生実:
「京都にはいましたね。大学生で。でも演劇は観てなかったか。」
犬飼:
「じゃあ、京都の大学生だったんですね。その頃にマレビトの会はエジプトに行って、お腹を壊したり、」
松田:
「してました。」
犬飼:
「いろんな物を運んで、紐の長さを気にしたりしたわけですね。」
松田:
「その時、初めて映像を使ったんですよ。」
犬飼:
「ああ、そうなんですか。」
松田:
「その時に、あの遠藤幹大さんが。」
犬飼:
「今もマレビトの会の、メンバーというか、」
松田:
「メンバーじゃないですけどね。」
犬飼:
「名前が載ってますよね。クレジットされている。」
松田:
「記録映像撮ったり。映画監督ですから、前回の『広島上演する』っていう映画の方でね。監督の一人だけど。」
犬飼:
「ここから遠藤さんが関わり始めたんですね。」
松田:
「関わってくるようになって、」
犬飼:
「映像という新しい手段も?」
松田:
「そうですね。ただ動画じゃなくて。その時は。写真を、ツインタワーのようになっているコンクリートの構造物に、投影していくっていうのをつくりました。」
犬飼:
「なるほど。そうか、ツインタワーとかもモチーフになって、」
松田:
「なってましたね。」
三宅:
「あの、」
犬飼:
「ここで三宅さんから追加情報が。」
三宅:
「はい。先ほど松田さんが言われてた、集大成っていう言葉は、当時の読売新聞(2006年9月26日夕刊)の記事とかにも『アウトダフェ』について、見出しとして書かれてました。」
犬飼:
「『アウトダフェ』に集大成だ、とですね。マレビトの会の、」
三宅:
「「リアル超越した集大成」。それで『アウトダフェ』と『クリプトグラフ』は姉妹編とも言える内容だと書いてあるので、やはり『アウトダフェ』と『クリプトグラフ』っていうのは一つのまとまりで集大成だったんじゃないかなと思います。
当時の舞台写真が記事に出てるんですけど、先ほど松田さんが言っているように、上から物を吊るすっていうのが印象的な舞台空間であるのと、『アウトダフェ』だとコンクリートの塊ですかね。
『クリプトグラフ』だと電気のモチーフ。私が見た、同じぐらいの時期にやってたガルシア・ロルカの『血の婚礼』を松田さんの演出で上演した作品でも、水が落ちてくる装置を上から吊るしてたりして。当時は上に何かを吊るすということが、モチーフとして印象的だったのかなと。いま全く素舞台であの上演をしているので、そういう印象を持ちました。」
犬飼:
「なるほど。舞台美術がしっかりとあったんですね。舞台美術というファクターが、かなり重要なものを占めていた舞台、」
松田:
「なんかぼちゃぼちゃ落ちてましたよね。上から。」
西山:
「『血の婚礼』ですか。はい。ずーっと一定の間隔で落ちてましたよね。」
松田:
「あれ大変だよね。」
西山:
「すごいですね、あの機構。」
松田:
「あれ夏目さんが。」
西山:
「夏目さん。舞台監督、」
松田:
「舞台監督の夏目(雅也)さんが。 」
三宅:
「それとすみません、記憶に関する、『アウトダフェ』だと、チェルノブイリをモチーフにもしながら、被爆者の記憶も重ね合わせてたってことなんですけど。
記憶というテーマが、ある意味で焦点に当たるような気がするんですけど、それはなにかきっかけとか、思い出すことなどあれば、松田さんから何かお話いただきたいんですが。」
松田:
「記憶、そうですね。
そうかな、記憶。うん。いや、記憶って言っても、まあね。っていうか、うーん、まあ大きいから、テーマが。大きいっていうか、どういったらいいかな。
記憶っていうのは、演劇を作る上でずっとモチーフにはしてきたんじゃないかな。ただ、そういう意味では意識的に、証言とか記憶とかを、あるいは個人的な自分の記憶と、自分の記憶から想起できないような、カタストロフィーとしての歴史的な記憶という問題と、どうやって上演空間の上で繋げていけるかというのはあったかもしれないですね。
なので『クリプトグラフ』で『見えない都市』の都市の記録と、都市の記憶というか、そういうもの喋っては、都市の記憶にまつわる遺物を弔うように、電球と一緒に吊るしていくっていう。あの上演なりのなんか弔いの方法みたいなものを。
だから儀式的な作業をやってたような気がしますよね。吊るすとかね、そういうところあると思うけど。構造物と共に演劇つくるって、そういうところあるかなと思いますけど。『王女A』に関しても記憶の収蔵庫みたいなものがあって、」
犬飼:
「(前回)〈引き出し〉って言ってたやつですね。」
松田:
「電球が、あの時は上に上がっていくような感じでしたけれども。唐突に、電線とともに上に上がっていくような感じでしたけどね。その後、下げるようになったし。
電球フェチなんですよね、僕。」
犬飼:
「ほう。」
松田:
「電球好きなんですよね。間接照明フェチなんですよ。」
犬飼:
「じゃあ今のこの場所の照明とかもう、なってない、」
松田:
「なってないですね。」
犬飼:
「蛍光灯が乱雑に並んでるような照明ですよね。」
松田:
「間接照明フェチなんですよ。」
犬飼:
「なるほど。家は全部そういう?」
松田:
「もう間接照明です。」
西山:
「おしゃれですね。」
犬飼:
「こういう丸い電球が吊るされたりとか?」
松田:
「吊るされてないですけど。なんか好きです。」
犬飼:
「個人的に美しいと思うものがもちろん反映されているとは思うんですけど。舞台美術にも。」
松田:
「間接照明と関係ないかな。蛍光灯が嫌いですね。 」
犬飼:
「じゃ、次やるときは、もうちょっとムーディーなところでできるといいですね。 」
松田:
「(天井を指して)あれは?」
犬飼:
「ああ、(天井に)ありますね。レール(ダクトレール)の。」
松田:
「とは言え、『声紋都市』では蛍光灯でやってましたけどね。」
犬飼:
「『声紋都市』っていうのが次の作品になっていくんですけど。」
松田:
「もう今日は終わりなんですか。今日はしゃべんない? 」
犬飼:
「今回はここまで。」
西山:
「あ、はい。」
松田:
「早くしゃべりたいですけど。次。」
犬飼:
「今回は『アウトダフェ』と『クリプトグラフ』という、かなり大作というか、集大成というか、」
松田:
「そうですね。」
犬飼:
「この2つを振り返ったわけでした。これはテキストも読めますのでぜひ。」
西山:
「面白いです。」
松田:
「面白い?ちょっとわけわかんないですけど、」
西山:
「なんかスパムメール、実際届いたスパムメールを、」
犬飼:
「そうそうそう、その話もしたかったですけど。(都市の)報告がスパムメールなんですよね。」
松田:
「スパムって美味しいよね。」
西山:
「もう疲れちゃったみたいです。」
犬飼:
「ちょっと終わっときますか。スパムメールあったなって。スパムメール時代だったなって。 」
西山:
「ああ、そうですよね。」
犬飼:
「2000年代の半ばですよね。」
松田:
「今ないよね。」
犬飼:
「あんまりないですよね、最近は振り込みとかの詐欺とか宅急便が届いてます、みたいな。 」
松田:
「フィッシング、釣り広告、」
犬飼:
「それ(スパムメール)もひとつのアイディアとして、テキストのアイディアとして使われていたというような。
それがテキストとして使われているのも、印象的な『クリプトグラフ』でしたね。「クリプトグラフ」っていうのは暗号っていう意味ですよね。」
松田:
「はい。」
犬飼:
「だから暗号めいたスパムメール、そのメールもある種の暗号みたいな、意味合いもあるんでしょうかね。」
西山:
「そうですよね。」
犬飼:
「次は先ほど(名前が)出た『声紋都市 父への手紙』という作品を振り返ります。今日はどうもありがとうございました。」
マレビトの会 新作公演

『皿の上の見えない人間 Invisible woman on the plate』
日程|2026年3月19日(木)〜 22日(日)
会場|SCOOL(東京・三鷹)